非ヘム鉄は「劣った鉄」なのか|最新研究が示した意外な役割

鉄の話をすると
栄養に詳しい人ほど
こう言います。

「非ヘム鉄は吸収が悪いから、ヘム鉄の方がいい」
「いや、ヘム鉄よりキレート鉄の方がもっといい」

たしかに、吸収率だけを見ればその通りです。

植物性の非ヘム鉄は吸収されにくく
動物性のヘム鉄や、人工的に加工したキレート鉄の方が
効率よく身体に取り込まれます。

だから鉄のサプリといえば
キレート鉄が”最強”とされがちです。

でも最近
その常識に「待った」をかけるような研究が出てきました。

非ヘム鉄には
非ヘム鉄にしかできない仕事があった
というんです。

野菜の力は「ビタミン」だけじゃなかった

2026年8月、科学雑誌『Cell』に
スウェーデンのカロリンスカ研究所のチームが発表した研究があります。

葉物野菜やビーツには
硝酸塩という成分が多く含まれています。

そして豆類や緑黄色野菜には
非ヘム鉄が含まれている。

この研究で見つかったのは
腸内細菌がこの硝酸塩と非ヘム鉄を組み合わせて
身体に役立つ物質を作り出す
という経路でした。

非ヘム鉄が、大事なものを「運ぶ」

私たちの身体の中では
一酸化窒素(NO)という物質が

血管を広げて血圧を下げたり
血流をよくしたり
健康を支える立役者として働いています。

ただ、この一酸化窒素には弱点があって
とても不安定で、すぐに消えてしまうんです。

せっかく良い働きをするのに、長続きしない。

そこで登場するのが、鉄です。
鉄が一酸化窒素を抱え込むと
安定した形になって、消えずに全身へ運べるようになる。

血流に乗って、必要な場所まで
一酸化窒素を届けられるようになるんです。

そして、この運び屋として使われていたのが
吸収が悪いと言われてきた、あの非ヘム鉄だったんです。

「吸収が悪い」とされてきた鉄が
実は身体の中で、大事な物質を運ぶ役割を担っていた。

これは、ちょっと意外ですよね。

腸内細菌がいないと、作れない

面白いのが
この研究のもう一つのポイントです。

腸内細菌のいない状態のマウスでは
この仕組みがまったく働きませんでした。

つまり
硝酸塩と非ヘム鉄という材料があっても
それだけではダメ。

腸内細菌が職人として働いてくれて、はじめて成り立つ。

材料(野菜の硝酸塩と非ヘム鉄)と、職人(腸内細菌)。

この両方がそろって
はじめて身体に役立つ働きが生まれる
というわけですね。

実際、マウスの実験では
この仕組みが活発になると血圧が下がり
血糖のコントロールが改善して
肝臓の脂肪も減ったそうです。

鉄は「多ければいい」ものじゃない

ここで、最初の話に戻ります。

「非ヘム鉄は吸収が悪いから劣っている」

たしかに吸収の効率だけを見れば
非ヘム鉄はヘム鉄やキレート鉄に劣ります。

だから
鉄の不足が深刻で今すぐ補わなければいけない場合には
キレート鉄が最優先になることもあるでしょう。

でも、僕はこのブログで
鉄は身体の中で炎症を引き起こす側面もある
ということを繰り返しお伝えしてきました。

鉄は、補えば補うほどいいわけではないんです。

だからこそ
鉄をサプリで補うなら
順番と量が大切でできるだけ自然な形がベスト
というのが、僕の考えです。

今回の研究は、その考えを後押ししてくれるものでした。

非ヘム鉄には、吸収効率とは別の、独自の役割がある。

野菜と一緒に摂った非ヘム鉄が
腸内細菌の手で、身体を守る働きに変わっていく。

これは
効率よく吸収されるだけのキレート鉄には
できないことかもしれません。

身体は「効率」だけで動いていない

そしてこれは
鉄に限った話じゃないと思います。

栄養ってつい
「どれが一番効率よく吸収されるか」
で考えがちです。

だから
成分を抽出して、濃縮して
一番効率のいい形にしたサプリが”最強”とされる。

でも、身体の中では
効率だけでは測れない
いろいろな役割が絡み合っています。

今回のように
食べ物という自然な形で摂った栄養が
他の成分や腸内細菌と手を組んで
思いもよらない働きをしてくれることもある。

鉄意外にもまだ解明されていないだけで
こういう”食べ物ならではの連携プレー”は
他にもたくさんあるはずです。

だからこそ
サプリで一点集中に補うより
食べ物から自然な形で摂る。

そして、それを活かしてくれる腸内環境を整えておく。

遠回りに見えて
実はこういう食べ方の方が
身体の仕組みには合っているんでしょうね。

ってことで、今回はこの辺で。
では、また。


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