「目を覚まさせる」仕組みから眠りを考える

心の病気

前回まで、眠りを作るメラトニンの話をしてきました。
今日は逆の視点から、眠りを考えてみます。

眠りって
「眠くさせる」仕組みだけで成り立っているわけじゃないんです。

実は
「しっかり目を覚まさせる」仕組みも
同じくらい大事なんですね。

その覚醒を担っている主役が
今日お話しするオレキシンという物質です。

最近、睡眠薬でも名前を聞くようになったので
耳にしたことがある場合もあるかもしれません。

オレキシンは「起きている」を支える物質

オレキシンは、脳の中で作られる物質で
覚醒を維持する働きをしています。

簡単に言うと
日中しっかり目を覚まして、活動的でいられるのは
このオレキシンが働いてくれているおかげです。

オレキシンがしっかり出ていると
日中はシャキッと起きていられる。

そして夜になるとオレキシンの働きが落ち着いて
自然に眠りに移行できる。

つまり
日中の覚醒と夜の眠りは、セットで成り立っているんですね。

日中にちゃんと覚醒できていない子は
夜もうまく眠りに入れない。

逆に、夜ぐっすり眠れると
日中しっかり覚醒できる。

この2つは、切り離せない関係なんです。

睡眠薬にも応用されている

最近の睡眠薬に
このオレキシンの仕組みを使ったものがあります。

デエビゴやベルソムラといった薬を
聞いたことがあるかもしれません。

これらはオレキシンの働きをブロックするタイプの睡眠薬です。

つまり
「覚醒させる物質」を抑えることで
眠りに導くという発想ですね。

昔ながらの睡眠薬が
「脳を強制的に鎮める」
方向だったのに対して

こちらは
「目を覚まさせるスイッチを切る」という
より自然な眠りに近いアプローチだと言われています。

こういう薬が出てきたこと自体が
「眠りには覚醒のコントロールが大事」
ということを表しているんですね。

もちろん
子どもに安易に薬を使う話ではありません。

大事なのは
この仕組みを知った上で
薬に頼らずオレキシンのリズムを整えることです。

子どものオレキシンを乱すもの

では
子どものオレキシンのリズムは
何によって乱れるのか。

夏休みに特に気をつけたいポイントがいくつかあって
特に気をつけたいのが「夜の光と刺激」です。

スマホ、ゲーム、動画。

夜遅くまで明るい画面や刺激的な内容に触れていると
脳が「まだ起きている時間だ」と勘違いして
オレキシンが働き続けてしまいます。

特に、対戦ゲームや動画で脳が興奮すると
なかなか覚醒が収まりません。

そして、不規則な食事。

実はオレキシンは
空腹や血糖とも関係しています。

オレキシンという名前は「食欲」に由来していて
もともと食行動に関わる物質として見つかったんです。

食事の時間がバラバラだと
覚醒のリズムも乱れやすくなります。

あとは、夜眠れないという人の大半が当てはまる昼間の活動不足。

日中ダラダラ過ごして身体を動かさないと
覚醒のメリハリがなくなります。

昼にしっかり活動しないと、夜との切り替えがうまくいきません。

夏休みは、この3つがそろいやすい時期ですよね。

夜更かしでゲーム
食事の時間はバラバラ
昼間は暑くて家でゴロゴロ。

これでは、覚醒と睡眠のリズムが崩れて当然なんです。

「メリハリ」がオレキシンを整える

オレキシンのリズムを整えるコツは
一言でいうとメリハリです。

昼はしっかり覚醒して、夜はしっかり鎮める。
この差をはっきりさせることが大事なんですね。

昼間は、外に出て身体を動かす。
明るい光を浴びて、活動的に過ごす。

そうすると
オレキシンがしっかり働いて
日中の覚醒がはっきりします。

そして夜は
強い光や刺激を減らして
脳を興奮させないようにする。

オレキシンの働きが自然に落ち着いて
眠りに入りやすくなります。

前回お話ししたメラトニンが
「夜の眠り」を作る係だとすると

オレキシンは
「昼の覚醒」を作る係。

この2つがきちんと切り替わることで
きれいなリズムができあがるんです。

眠りは「昼の使い方」で決まる

こうして見てくると
面白いことに気づきます。

前回のメラトニンの話も、今回のオレキシンの話も

結局、夜の眠りは「昼をどう過ごすか」で決まっているんですよね。

朝日を浴びる。
日中しっかり活動する。
ちゃんと食べる。

こういう「昼の使い方」が
そのまま夜の眠りを作っている。

夜眠れないからといって
夜だけをどうにかしようとしても
なかなかうまくいきません。

鍵は、いつも昼にあるんです。

そして実はこれ
子どもの睡眠だけの話じゃないんです。

最近、昼と夜の光の浴び方が
睡眠だけでなく健康そのものにも関わっているという
大規模な研究の結果が出てきています。

次回は少し視野を広げて
その研究の話をご紹介しますね。

「夜の明るさ」と「昼の明るさ」が
私たちの身体に何をもたらすのか

ちょっと驚くような内容です。

ってことで、今回はこの辺で。
では、また。


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